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第20回 特集 Wホラーシール

 みなさんご存知、Wホラーシールです。私の記憶が確かなら、1988年に集めていましたので、その頃に販売していたものと思います。販売はアマダ印刷で、駄菓子屋のいわゆる引き物。

 

駄菓子屋で売られていたWホラーシール。

 

 当時ビックリマンシールに連なるシールブームで、様々なオマケシールが出回っていました。その中でオムロの謎など結構グロいものもありましたが、このWホラーシールが断トツでした。

 とにかく絵がリアルな上に2枚目の残虐シーン。発禁になってもおかしくないシロモノです。この頃は普通にスプラッター映画をテレビで放送していた時代ではありますが、これが子ども向けに売られていたわけですので、いかに昔のコンプラがおおらかだったか…

 それでは身の毛もよだつ、それぞれのキャラクターを紹介していきます。

 

 ボゾニンです。フードを被った、角のあるトカゲのような姿でヨダレを滴らした舌を出しています。

 実は、このシールはほとんどがゲームブックファイティングファンタジーシリーズのモンスターを元ネタにしていて、このボゾニンも同シリーズの変化を参考に描かれています。

ファイティングファンタジーの運命の森の表紙に描かれている変化。

 小動物や人間の老人に化けて近づき、油断させると言う説明も変化というモンスターの説明と同じです。

 

 ドラモスです。これは、ファイティングファンタジーの血獣を参考に描かれています。

ファイティングファンタジーの血獣。住んでいる沼から動けないことや、本物の目が二つだけという説明も共通しています。

 

 バッドデビルです。元ネタは悪鬼です。名前もなんとなく悪鬼を英語表現にした感じですね。

ファイティングファンタジーの悪鬼。どくろ砂漠にいるモンスターとされ、ここからバッドデビルも砂漠にいるとの説明が付けられています。

 

 ジンゾラです。元ネタは地獄魔人。

ファイティングファンタジーの地獄魔人。魔王からの使命を受けて人界に派遣され、遭遇した人間に化けることができて、普通、化けられた人間は殺され食べられるとの説明があり、ジンゾラの説明の参考にしているのがよくわかります。

 

 デモンです。鬼(オーガー)が元ネタ。

ファイティングファンタジーのオーガー。トロルやゴブリンなど多くの雑種と親戚関係にあり、誰かに使役されるときは、様々な武器を与えられて使うことができるという説明です。デモンの説明にもそれらの言葉が使われていますので、元にしているのがよくわかります。

 

ヤガイー。元ネタは角魔人。

ファイティングファンタジーの角魔人。天候の悪い、闇の深くなる夜に現れて人間の魂を集めるとされるほか、腐りかけた雄羊の頭が両肩から生えているとのイラストどおりの説明があり、そのままヤガイーの説明にも使われています。また、ヤカーとも呼ばれるらしく、ヤガイーの名前の元となっているのが想像に難くありません。

 

 ラッツラです。元ネタはネズミ男。と、言ってもビビビのではありません。

ファイティングファンタジーネズミ男。説明では下水道や廃墟に追いやられ、闇の中で匂いで獲物を追いつめるとされ、ラッツラの説明と共通しているので参考にしていることがわかります。

 

バンバラ、元はハマカイ。

ファイティングファンタジーのハマカイ。その説明の中で、いく世紀も永らえ、萎びた脆弱な体と禿鷹に似た頭部をもち、気むずかしく、気まぐれな性格で、外では目立たない旅装で長い杖をつき、杖には魔法の力があるのが普通である、とあり、参考にしていることがわかります。

 

 コウミン、元はミク。

ファイティングファンタジーのミク。悪戯好きで好戦的であり、遊び半分に人間を殺してしまう、変身能力があり毒蛇に化けた時はその毒も本物のように効いてしまう、と言った説明がコウミンと同じで、元になったことがわかります。

 

 スレイビー、元は魔奴隷。

ファイティングファンタジーの魔奴隷。魔王の召使いであり、赤く光る目と骸骨の外見に修道僧の僧衣のような衣をまとい、剣を持つ相手でも素手でこの世の者ならぬ怪力で応じるとされます。名前は奴隷の英語、スレイブから来ていると思われ、説明はもちろん、目が赤く描かれているなどの外見からも参考にしているのがよくわかります。

 

 ドドキラー、元は幽鬼。

ファイティングファンタジーの幽鬼。黒い頭巾に顔を隠しているが、戦うときは脱ぎ捨てて顔を見せ、その顔は骨の上にぴっちり張り合わされた不気味な黄色味をおびた皮膚、血のように赤い眼下におちくぼんだ目であり、目を合わせた者すべてを金縛りにし、普通の武器は通用しない、との説明が、ドドキラーの絵や説明の参考としているのがよくわかります。

 

 ゾンビ、元ネタも死者(ゾンビー)。

ファイティングファンタジーのゾンビー。説明には、皮膚は傷だらけで剥がれ落ちかけ、衣服はぼろぼろになって体にぶら下がっているだけ、闘いでは結構体力があり、首を締めたりする、とあり参考にしていることがわかります。

 

 グーダ、元ネタは屍鬼(グール)。

ファイティングファンタジーのグール。かつては人間だが、その魂が生と死の境目をさまようおぞましい不死で、墓や納骨所に棲み、特に人間の死体を食べ、鉤爪の生えた手で襲いかかり体を麻痺させる、そうなると食べられるのを待つしかない、との説明でグーダとほぼ同じです。

 

 ゾンゲラ、元は生き骸(むくろ)。

ファイティングファンタジーの生き骸。その説明には、外見はゾンビーと似て腐りかけた死体の形をとり、皮膚が崩れ落ちて臓物や骨がむきだしになっているところもあり、もろく見えるが驚くべき速さで動き、攻撃すると六つに分裂して襲ってくる、とあり、参考にしていることがわかります。

 

 ババゲラ、元はバンシー。

ファイティングファンタジーのバンシー。声は聞かせるがめったに姿を見せない、永眠できずにいる死者の霊で、老爺または老婆の姿で鼻腔と歯は一つしか無く、鱗におおわれた鉤爪の生えた手を持ち、その悲鳴に心を惑わされると恐怖に凍りついて攻撃できなくなる、との説明から参考にしていることがわかります。

 

 ゲロモア、元はファイティングファンターのモンスター、腐れで、このモンスターはカビだらけの異様な骸骨で、骨も目も不健康な黄色。まわりの空気は疫病と腐敗によどみ、攻撃と同時に疫病を背負いこんだ胞子の雲を放出する。腐れ病に感染し、これによって死んだ場合24時間後に新たな腐れとして復活する、との説明があり、参考にしていることがわかります。

 

 ファイヤーゴースト。その説明は、ファイティングファンタジーの火妖を参考にしていて、人間を思わせる小さな体で全身が炎、水をかけても大きく強くする、という部分を特に参考にしているのがわかります。ただし、その姿は、火妖の親戚であるデヴリンを参考にしているかもしれません。

火妖の親戚であるファイティングファンタジーのデヴリンの挿し絵。

 

 ガーゴル、元はガーゴイル

ファイティングファンタジーガーゴイル。その説明は、一般的なガーゴイルのものとさほど変わりませんが、石そっくりの灰色まだらの保護色を持ち、丈夫な皮膚は普通の武器では傷つけられず強靭な剣でも折れてしまう、火を見ると後ずさりする、などの説明をみると、ガーゴルの参考にしているのがわかります。

 

 ウルフーダ。これははいわゆる狼男ですが、これもファイティングファンタジーが元になっています。人狼を含む人獣の説明に、満月の夜に姿を変え、咬まれた人間は高熱を発した後同じ人獣となる、とあり、参考にしていることがわかります。

 

 ベアゾン。これも、ファイティングファンタジーの人獣のなかの人熊の説明に、1~6頭の本物の熊を同行し、熊たちは人熊の命令に従い、めったに腹を立てないが怒らせると怖い、とあり、参考にしていることがわかります。

 

 ドラキュラ、キラシールです。一般的なドラキュラのイメージの説明ですが、ファイティングファンタジーの吸血鬼の説明に、邪悪な魔力と永遠に近い生命を持ち、強力な催眠効果のある視線を使い近づき、長く伸びた歯で首に咬みつく、とあり、参考にしていることがわかります。また、赤い目を持つこともファイティングファンタジーの説明にありますので、目が赤く描かれていることからも参考にしているのがうかがえます。

 ちなみにキラシールは、一束に必ず全種類が入っているわけではないため、結構レアで全部集めるのは大変でした。

 

 メドゥーサ、キラシールです。一般的なメドゥーサの説明であり、ファイティングファンタジーにもメデューサが登場していますが、お互いの説明にそれほど共通する表現はないため、特に参考にはしていないかもしれません。

 

 キョンジン、キラシールです。当時流行していたキョンシーをもじったものであり、ファイティングファンタジーキョンシーは登場しません。説明も映画、霊幻道士の中で表現された一般的なものです。

 

 オーグン、キラシールです。元はオーク。

ファイティングファンタジーのオーク。暗い地底を好み、気に入りの武器は鋸刃の剣、鞭、殻竿、棘つき分銅、槍であり、吐き気をもよおさせる不潔な生き物で、習性もそれにふさわしくおぞましい、とあり、参考にしていることがわかります。

ちなみにファイティングファンタジーの説明の中に、好物の料理はエルフの臓物ノームの血のソースかけであり、これが手に入らない時はネズミの胃のスープやコウモリのカレー煮で我慢する、とあり、オーグンのネズミの血のスープ、ゴキブリのサラダなどはここからの連想だと思われます。

 

 ヘッドマーダー、キラシールです。元ネタは頭脳殺し。

ファイティングファンタジーの頭脳殺し。英語表記ではブレインスレイヤーですので、ヘッドマーダーの名前もこれをもじっています。地底で集団生活し、催眠術で相手を金縛りにし、タコのような触手で包み込み、精神力をむさぼるとされ、参考にしていることがわかります。

ファイティングファンタジーのモンスター事典には、先のモノクロの挿し絵のほか、カラー口絵にもこのモンスターが、まるで某神話の神様のように描かれているのですが、ヘッドマーダーの参考としているのがよくわかります。

モンスター事典の口絵に描かれたブレインスレイヤー。

 

 

 

元ネタも クトゥルフ神話が 元ネタさ

 

 

出典

ファイティングファンタジー モンスター事典」1986年 社会思想社